
剣道には「一眼二足三肝四力」という言葉があります。
これは、剣道の修行において大切な要素を順番に示した教えです。
すなわち、
眼・足・肝・力
の順で重要であるという意味になります。
この記事では、「一眼二足三肝四力」の意味について、全日本剣道連盟の学科審査の解答例を参考にしながら、もう少し詳しく考えていきます。
一眼二足三肝四力(模範解答)
全日本剣道連盟の剣道学科審査問題例と解答例では、「一眼二足三肝四力」について、次のように説明されています。
剣道を修行する過程において、重要な事柄を述べた古人の教えである。第一に相手を見る目、第二に足さばき、第三に胆力、すなわち何事にも動じない強い気持ちや決断力、第四に力、すなわち技を発揮する身体能力が重要であるという教えである。
(1)一眼
相手と対峙したときは、まず相手の思考や動作を見破る眼力(洞察力)が最も大切である。宮本武蔵は「観見二様の目付け」として「観の目強く、見の目弱く」と教えている。
(2)二足
初心者ほど手先で打って足が伴わないものである。道歌に「立合いは竹刀で打つな手で打つな、胴造りして足で打て」と教えているが、すべての打突は足がその根本であり、足の出ない剣道は居付技として卑しまれている。
(3)三胆
胆は胆力である。四戒と云われる驚懼疑惑の四病を払拭して、一刀両断する勇気と決断が大切である。
(4)四力
力は思い切った技、およびその技を発揮する体力や筋力などの身体能力である。
一眼|相手をよく見る
剣道では、一番大切なのは「眼」だと教えています。
ここでいう眼とは、単に目で見ることだけではありません。
- 相手の動きを観察する
- 起こりをとらえる
- 心の変化を感じ取る
といった、相手を見抜く力(洞察力)を意味しています。
相手の動きの起こりをとらえることができれば、無理なく打突の機会をつかむことができるわけです。
模範解答にある「観見二様の目付け」について、剣豪宮本武蔵は、著書「五輪書」水の巻において、以下のように説いています。
敵の働きに対する目の付け方は、「大きく広く」ということを心がけて付けるのである。「観」「見」二つの 目 付 という理がある。「観」の目付を強くして、「見」の目付を弱くし、遠い所を近く見て取り、近い所を遠く見て取るのが、兵法のうえでは大切だ。
宮本武蔵の言う「観の目」は心で本質を見る、「見の目」は現象を追うという意味で、剣道では観の目を重視することで、技の前後、気の動き、攻守の機会を捉えやすくなることを言っています。
目付については、こちらの記事で詳しく解説しています。
二足|剣道は足で打つ
次に重要なのが「足」だと教えています。
剣道では昔から
剣道は足で打つ
と言われています。
どれほど良い技を知っていても、足の伴わない打突では有効打突を奪うことはできません。
足さばきは
- 間合を詰める
- 攻める
- 打突
- 打ったあと抜ける
といったすべての動作の土台になります。
そのため、剣道の稽古では足さばきが非常に重視されています。
足さばきについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
三肝|勝負を決める胆力
三番目に重要なのは「肝」です。
ここでいう肝とは、
胆力・度胸・精神力
を意味します。
試合では、よく
- 打つべきところで打てない
- 前に出ることができない
といったことがあります。
これは技術の問題というよりも、心の問題です。
剣道では、このようなことが起こる心の乱れを四戒と言って戒めています。
四戒については、こちらの記事で詳しく解説しています。
四力|最後に力
四番目に重要なのが「力」です。
力とは
- 体力
- 筋力
などの身体能力を指します。
しかし、私が若いころ、初めてこの一眼二足三肝四力について教わった時、この四力の意味は、「最後に力」という意味だと教わりました。
つまりこの教えには、むしろ
力ばかりに頼るな
という思いが込められているのです。
相手をよく見て、適切に動いて、覚悟を決めることができて、はじめて力が役に立つのです。
まとめ
一眼二足三肝四力は、剣道を修行する過程において、重要な事柄を順番に示した言葉であり、日々の稽古の中で
- 相手を見る眼を養うこと
- しっかり足を使うこと
- 心を磨くこと
- 体を鍛えること
という点を意識することが、強くなっていくためには重要なことなのです。